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Original Story and Character Concepts by Rei Hiroe Directed by Ei Aoki Animation Produced by Studio TROYCA Original TV Animation

Re:CREATORS(レクリエイターズ)

interview

2017.03.18

Re:CREATORS キーパーソン対談 “私たちが仕掛けました”

広江礼威氏原作による『Re:CREATORS』は、どのような経緯で企画が立ち上がったのか? そのきっかけとなったのが、アニプレックスの岩上敦宏氏と小学館の岡本順哉氏の二人の間で交わされた会話だった。GX編集部の『ブラック・ラグーン』担当編集者が聞き役となり、巨弾プロジェクト『Re:CREATORS』誕生について語り合ってもらった。


アニプレックス / 岩上敦宏
プロデューサーとして『空の境界』、『魔法少女まどか☆マギカ』、『〈物語〉』シリーズ、『Fate/Zero』など数多くのヒット作を生み出してきたヒットメーカー。2016年4月よりアニプレックス代表取締役社長に就任。『レクリエイターズ』では企画の立ち上げに携わる。
小学館 / 岡本順哉
小学館クロスメディア事業センター所属。『ブラック・ラグーン』、『神様ドォルズ』、『ヨルムンガンド』などサンデーGXのアニメ作品や『劇場版ポケットモンスター』シリーズ、TVドラマや映画にもなった『闇金ウシジマくん』シリーズなど、アニメや実写を問わず数多くの作品にプロデューサーとして参加。

GX:今回ご登場頂いたお二人は、『レクリエイターズ』の企画の立ち上げに立ち会ったキーパーソンです。そもそもどちらから話が持ち上がったのでしょうか?

岡本:岩上さんとは、かなり昔にお仕事をしたことがありました。久々にお会いして、何か仕事を一緒にやりましょうという話になりまして、そこで岩上さんから「オリジナル作品をやりましょう」と言われました。「いいですね!」と言いながらも、小学館は漫画や小説原作をアニメ化してビジネスをしているので、オリジナル作品は難しいだろうと思ったことは覚えています。

岩上:そんな無茶ぶりをしましたか。ちょっと覚えていません(笑)。ただ自分がオリジナル作品をやりたかった時期だったので、そういう提案を投げたのだと思います。僕は、逆に岡本さんに「広江さんでオリジナル作品はどうですか?」と提案されたことが最初の記憶です。

岡本:小学館では(原作なしの)オリジナルは難しいだろうと思いながらも、広江さんの話を振ったのは、『ブラック・ラグーン』の原稿を作る過程を知っていたからだと思います。広江さんはネーム作業の前に字コンテといってプロットと脚本の間のようなテキストを書いているんですよ。それを読ませてもらった時に字コンテのままでも何か出来そうだなと思っていました。

GX:岩上さんにとって、漫画家・広江礼威の印象は?

岩上:『ブラック・ラグーン』のアニメを見ていて原作も読んで、すごい作家だと思っていました。

岡本:そもそも岩上さんには、『ブラック・ラグーン』をすごくほめてもらっていましたよね。

岩上:話は飛びますが、広江さんとお会いして『ブラック・ラグーン』の話をしたときに一番驚いたのは、あまり海外旅行に行く人じゃなかったことです。

GX:よく「取材旅行していますよね?」とは聞かれます。現地に取材して描いたことは一度もないですね、『ブラック・ラグーン』に関しては。

岩上:それを聞いて、イマジネーションがすごいと改めて思いました。あと漫画を読んでいると、映画的というか映像感覚を感じます。キャラクターの立て方やセリフの言い方や場面の切り取り方が、すごく映像的だなと思います。ご本人は、映画もお好きですよね。だから広江さんのような才能が、アニメに参入してほしいという気持ちはありました。だから岡本さんから提案された時、「そんなことが本当に実現するのですか?」という感じでした。

GX:そこから実際に岩上さんと広江くんで顔合わせをして、そのあとは割と即答で引き受ける展開になりましたっけ?

岩上:僕から見ていると、広江さんが(この企画を)やるかどうか迷っている期間はなかったと思います。ただ広江さん自身がやってみたいと言って、そこから何をやるか、いくつかのアイデアを検討する期間は長かったと思います。でも『ブラック・ラグーン』を読んでいる限り、絶対に面白くなると思っていましたし、広江さんが書いてくれたいくつかの原石のようなアイデアをみて、これはイケると思いました。(何ができるか)もう楽しみしかなかったですね。

GX:広江くん本人は、アニメ用の原作なんて書いたことがないので、方法論が決まるまでかなり苦労してましたね。結局、「いつも通りに書こう」という結論になって、最初に話に出た漫画と同じように字コンテを書いていくことになりました。原作を執筆する上で作品のテーマなど広江さんへの要望はありましたか?

岩上:具体的な要望はないですね。ただ、原作がないオリジナル企画で誰も先のストーリーを知らない訳じゃないですか。それはオリジナルTVアニメシリーズの良さです。来週どうなるか楽しみになるようなものであってほしいとは思いました。

GX:広江くんは「TVアニメシリーズのいいところは、最終回を決められることだ」って執筆しながら話してましたね。

岩上:広江さんのコメント通り、1クールにしろ2クールにしろ、テレビシリーズには最終回があるので、最終回のカタルシスみたいなものは作りたかったです。

岡本:基本、やりたいものを作ろうとはまず話していましたね。

岩上:あれだけ面白い漫画を描くわけですからね。広江さん自身が面白いと思うものが一番いいだろうと思っていました。

「広江さんの話のたたみ方ってまだ誰も知らないはずですよね。」(岡本氏)

GX:そして数年をかけて、『レクリエイターズ』の原作は完成したのですが、まず最初に読んだ時の感想はどうでしたか?

岩上:今はまだ詳しくは言えないけど、最初のプロットというかメモ書きみたいな段階で、設定が面白くてキャラクターがすごく活きそうだなとかアイデアが面白いなという印象を受けました。そこから広江さんが書いてくれた原作の膨大なテキストを読むと、そこにテーマ性が加わっているんですよ。設定も面白いけど、それを膨大なテキストで肉付けしたことで物語にテーマが盛り込まれて、そこはさすがだなと思いました。

岡本:尋常じゃないぐらい膨大なテキストでしたね(笑)。広江さんの漫画でやれないことが詰め込まれて、結果すごくいいものになったと思いました。

岩上:まあ膨大さにも感服しましたけどね。よくぞ、これだけのものを書いてもらったという(笑)。要は読み物として面白く読めたことが何よりでした。

岡本:僕は広江礼威作品のラストが読めたことに感動しました。「終わったよ、すげえ!」って、しかもすごく良かった! 広江さんの話のたたみ方って、世の中の人が、たぶんまだ誰も知らないはずですよね。

GX:たしかに。現在進行形だったり打ち切りだったり…。では、原作で一番印象的なところはどこでしょうか?

岩上:具体的には言えないしハードルも上がっちゃうけど、やはり物語にテーマがあることです。言い換えると素直に感動したということです。事前にこういったことを言いすぎるのもよくないですが、でも本当に面白かったです。

GX:ちなみに広江さんがキャラクター原案を担当するのは最初から織り込み済みでした?

岩上:そうです。

岡本:最初はコミカライズもやってほしいと言っていたぐらいですからね。

岩上:さっき話した原石のようなアイデア出しの時から、キャラクターのラフイラストみたいなものはありました。広江さんの漫画の魅力はキャラクターの造形にもあるので、そこは活かしたいなと思っていました。

「あおきえい監督のバランス感覚が広江さんの原作に合うと思いました。」(岩上氏)

GX:原作やキャラ原案が上がってきて、次はアニメのスタッフについてですが。

岩上:さてこの原作でアニメをどんなスタッフで作るかですけど…。

岡本:広江さんが数年かけて執筆しているうちに、岩上さんがどんどん偉くなっていくんですよ(笑)。

岩上:気がつけば社長になってしまいました(笑)。

GX:『レクリエイターズ』のサイドストーリーですね。

岩上:僕がだんだん社長に近づいていくこともあって、現場を担当するうちの鳥羽洋典さんや黒﨑静佳さんというプロデューサーが合流して、広江さんや小学館さんと相談しながら、この面白い原作を誰にアニメ化してもらうのがいいか検討するフェーズに入りました。

GX:そこで名前が出たのがあおきえい監督とトロイカでした。

岩上:あおきえい監督とは、僕は最初に『空の境界』という作品で一緒に仕事をして、そのあと『Fate/Zero』や『アルドノア・ゼロ』などでプロデューサーとして長く仕事をして、非常に信頼しています。彼の特徴というか上手いなと思うのは、リアルとファンタジーのバランスのとり方です。そのバランス感覚がすごくうまくて、広江さんの原作にぴったり合うと思いました。あと、鳥羽プロデューサーも一緒に『空の境界』をやっていたので、彼も「あおきえい監督しかいない」と主張していましたね。

GX:そのあおき監督と広江くんの共同作業については?

岩上:変わった形といえば変わった形だけど、原作の長いテキストを広江さんが書き、それをテレビシリーズとしてどういう話数に分けるか、そういうことを決めるのをあおき監督中心でやっています。そういう意味でシリーズ構成は二人併記ということになりました。

岡本:ちなみに岩上さんは、どの辺から面白くなりそうだと思いましたか?

岩上:それは最初に岡本さんから「広江さんでどうですか?」と言われた時からです(笑)。いいなと思った企画が、段々思ったほどじゃないなと落ち着いてしまうこともあるけど、『レクリエイターズ』は期待を裏切らずに面白くなっていっているし、優秀なスタッフもどんどん集まってきています。その辺はとてもいい形で高まっている感じはします。

GX:作品の見どころについてはいかがでしょう?

岩上:詳細は言えないけど、オリジナルアニメなので、純粋にどんな物語が始まるのだろうかと楽しみにしてもらえるといいなとは思います。オリジナルなのでストーリーを視聴者は知らない訳だから、そういう意味で次回が楽しみになってほしいです。そもそも現状でいうと広江さん原作であおきえい監督で、“どんな作品が始まるの?”とそこからだと思います。ただ、あまり勘ぐらないで頂いて(笑)。素直に毎週の放送を楽しんでもらえたらいいですね。

岡本:広江さんもあおき監督も超一流のクリエイターです。その二人を組み合わせた価値はフィルムに出ている感じはします。しかもエンタメとしてやっているので、楽しんでほしいです。

岩上:サンデーGXの読者の皆さん的には、広江さんの週刊連載です!という感じでしょうか。

岡本:広江礼威の作品が毎週見られますよ。ただ、『ブラック・ラグーン』のファンに申し訳なかったところがあるかも知れませんが…。でも、『レクリエイターズ』も渾身の作品になってますんで!

GX 『ブラック・ラグーン』は春から連載再開予定なので、もうしばらくお待ちください。

岩上:まずはアニメを完成させて、皆さんに見てもらいたいです。早くオンエアを見たいですね。

岡本:僕もそう思います。早くオンエアしてくれないかな。


文・構成:久村竜二 初出:月刊サンデーGX2017年2月号