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Original Story and Character Concepts by Rei Hiroe Directed by Ei Aoki Animation Produced by Studio TROYCA Original TV Animation

Re:CREATORS(レクリエイターズ)

interview

2017.09.16

Re:CREATORS キャストインタビュー #09 豊崎愛生

“Re:CREATORS(レクリエイターズ)” に登場する、個性的なキャラクターたち。その登場人物たちに命を吹き込むキャストのみなさんに、本ウェブサイト限定掲載のインタビューを行いました! 小松未可子さんに続いて、連載第9回目で最終回となる今回は、アルタイル(軍服の姫君)役を演じる豊崎愛生さん。物語の中心人物となったアルタイル役を演じる中で豊崎さんが感じたこととは?


アルタイルの感情に寄り添ってあげられたら、と思いながら演じました

──豊崎さんは視聴者としても “Re:CREATORS” をかなり楽しんでおられるとか。

豊崎:はい! 放送を毎週楽しんでます。本編はもちろん、特番も。ただ、第16話の放送があると思ってテレビを点けたらいきなり日笠(陽子)が出てきて、おまけに「ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン!」とか叫び出したときには、「見たかったのはお前の顔じゃねーよ!」と思わず画面につっこんじゃいましたけど(笑)。

──(笑)。では、この記事が公開されるのは最終回の放送後なのですが、あらためて順を追ってお話を訊かせてください。役にはオーディションで決まられたそうですが、その段階で印象に残っていることはありますか?

豊崎:まずいただいた資料を読んで、すごく面白そうだなと思ったことを覚えています。もともと広江(礼威)先生が描かれているマンガを読んでもいたので、関わらせていただけたらいいなと思いながら、オーディションが始まるのを楽しみにしていました。

──オーディションではどの役を演じられたんですか?

豊崎:真鍳ちゃんと、アリステリアと、アルタイルです。あと、まみかも振っていただいていたんですけど、当日に演じなくてもいいという話になりました。日笠も同じで、ほかにも私と同じ世代の声優さんたちは「まみかは受けなくても大丈夫です」と言われたのがおもしろエピソードで(笑)。私としては最初からアルタイルがいちばん演じたかったキャラクターだったので、彼女のオーディションを受けることができてとてもうれしかったですね。

──アルタイルのオーディションはどのようなものだったのでしょう?

豊崎:オーディション台本の時点で「森羅万象(ホロプシコン)」の呪文を唱えるところもあったし、カッコいい、冷静なセリフもあったし、後半の感情が爆発するところのセリフも既にあったんです。だから割りと振れ幅を大きく演じさせていただきましたね。特に意識していたのは、彼女が負の感情を出すところ。悲しいセリフ、恨み節的なセリフを演じるときには、彼女の感情に寄り添ってあげられたらいいなと思っていました。

──「寄り添う」というのは興味深い表現ですね。

豊崎:そうですね……どうにかしてあげたいというか、ほっとけないというか。そんなことを役に対して思うことは多くないんですけど、アルタイルのセリフとちょっと悲しそうな顔をした資料のイラストを見て、「この人はたぶん、物語の中で敵のポジションで描かれるのだろうけど、私は味方になってあげたいな」という気持ちがなぜか湧いたんです。声を当ててみたいというのと同時に、キャラクターに何かしてあげたい、というような。

──アフレコが始まってからはどんなことを考えて演じておられたのでしょう?

豊崎:第1話のアフレコ時点であおき監督から、アルタイルの目的やセツナとの関係性については他キャストのみなさんより先にお聞きしていたんです。だから突然現実世界にひっぱりだされてわけもわからずにアルタイルと対峙するセレジアや、そこに巻き込まれる颯太くんよりもセリフのテンションを重くしなければいけないなとは考えていました。その一方で、ただただとんでもなく強いやつが出てきたという鮮明な印象も与えたかったので、カッコいいところを前に出すことも意識していましたね。彼女の背後に広がる悲しみとか、重さとか、恨みとかを第1話では絶対に見せないようにしつつも、キャラクターに厚みがあるところをほんの少しは匂わせられたらいいな、と。

──その「厚み」の部分が最初に表に現れたのは、第8話でのまみかとの衝突でしょうか。

豊崎:あそこで爆発しましたけど、それ以前からちょっとずつ、アルタイルの表情パターンの内にいろんな顔が見えるようなお芝居をなるべく置いておくように心がけていました。基本的に誰かと対峙しているときには顔を崩さない人で、そこに大物感があるんですが、ふとした一瞬に感情が表にでるんです。たとえば第1話で最初に颯太くんを見たときとか。あのときアルタイルはふわっと、自分の内側に向けて話しかけるように笑っているんですよね。「誠に奇縁だ」という、のちに颯太くんがセツナを思い出すきっかけになるセリフとあわせて、彼女を演じていく上であのシーンで演じた内容はずっと忘れないで意識しておこうと思っていました。

──なるほど。

豊崎:まみかとのシーンは、そこまでの流れを受けながら、アルタイルが自分以外の誰かに初めて感情を見せるところですね。セツナにひとりで話しかけるみたいなシーンがちょこちょこあったんですけど、そこは感情を見せるといっても彼女の素の部分が出ているだけ。まみかとの会話では抑えていた感情が爆発しているんです。もともと彼女はまみかを殺そうと思っていたわけでは絶対にないんです。会話の中でまみかが触れてはいけないこと、セツナの名前を口走ってしまったから、力が暴発してしまった。彼女はセツナの遺志で生まれたキャラクター、つまり前途有望な女の子が自殺するほどまで追い詰められたときの心情をそのまま受け取って生きてきた人じゃないですか。しかもひとりで。そんな人の前に、あまりに正しくて眩しい人が出てきたときって、どんな感情になるのか。あそこは会話劇として、まみかの何がアルタイルの怒りを呼び起こしたのか、(村川)梨衣ちゃんと一緒に少しずつ探りながら作っていったシーンでした。私はお芝居をキャッチボールのようなイメージで捉えているんですけども、あまりにもまみかのセリフはド直球のストレートがずばずばと来ていたので、フルスイングするんじゃなくてバントするような感覚で返していたんです。そうしているうちに避けきれないくらいのデッドボールが来たので、思わず怒った……みたいな感じ。あまりにもかわいくて、まぶしくて、正しくて、本当に……そのとおりなんだよ! みたいな怒り方です(笑)。お手本みたいな正しい人が目の前にいたときちょっとツラくなってしまう感覚は、私にはすごくわかる。だからつらいけど、演じていて楽しいシーンではありましたね。

──アルタイルはある意味では損な役回りというか、色んな人の恨みを一身に浴び続ける立場に、期せずして置かれてしまうキャラでした。

豊崎:孤独な人だったなと思いますね。自分の中にいる、星になったであろうセツナに語りかけるけれども、その人にはもう会えない。せっかく生まれてきたのに、ひとりぼっちなんだなというのは、演じるときに強く意識していたことでした。

──そして最後は、そんな気持ちによって颯太たちに敗れていきます。

豊崎:セツナを出してきた相手に対して、最初は「卑怯だ! なんてひどいんだろう!」という気持ちになりましたね。アルタイルの味方として。彼女にとってアイデンティティの崩壊に近い事態だと思うんですよ。自分はセツナの無念を晴らすために生まれ、生きてきたのに、目の前に出てきたセツナ本人がそれを揺るがす。会いたかった、大好きな、かけがえのない存在に、世界への恨みつらみではなく「ありがとう」と言われてしまったら、「一体、どうしたらいいの!?」みたいな気持ちになりますよね。原動力として持っていた負の感情を、否定されたというよりは、包み込まれた。それが第21話の展開だったんだと理解しています。だから演じる上では、子供みたいになってセツナとおしゃべりをする感覚でしたね。もう一度生まれてきたというか……そもそも本当はセツナも、最初にアルタイルの元になった絵を描いたときって、負の感情を込めたわけじゃないと思うんですよね。本当に親のように、たくさんの人に愛されるように、愛を込めて一生懸命、絵が楽しいと思いながら描いたのがアルタイルだった。アルタイルはそんな大事なことを忘れてしまっていて、セツナはそこを思い出させてくれたというか、自分が創造主から深く愛されていたことをあらためて教えてくれたんだと。そんな風にも感じていました。

──ご自分の役を離れて、印象に残ったシーンはどこになるのでしょう?

豊崎:きらびやかな被造物たちの活躍も印象深いんですが、この作品のすごく素敵だし、他の作品にはなかなかない部分だと思ったのは、クリエイターの人たちの生き様というか、作品に対する愛情や熱意をしっかり描いているところです。とても生々しいですよね。松原さんたちがチャンバー・フェスに向かってみんなで箱詰めになっている姿は、まさに “Re:CREATORS” を作っているスタッフのみなさんの姿と重なるというか。どこまでが現実かわからなくなるような場面が、とても魅力的でした。もちろん、すべて現実の制作現場に忠実ではないとは思うんです。もっと思いもよらない作業とか、とんでもない労力と時間がかかっているはず。でもその一部でも、作品を通じてチラッと垣間見られる感じがするというか。クリエイターとして活動されている方々すべてに共感されるような部分があるなと思いながら見ていました。中でも、まりねさんが駿河さんの絵にちょっとジェラシーを感じるシーンとか、颯太くんが才能あふれるセツナに対して劣等感を覚えてつらく当たってしまうシーンとか、クリエイターとして生きることの、ただ楽しいだけじゃない部分もしっかり描かれているのがいいんですよね。さらには自分の生み出したキャラクターへの向き合い方とか、プライドのぶつかりあいとか、踏み込むのが難しいところも描いていて。そうやって描き出されるクリエイターたちの人間くささに和むし、共感するし、癒されるところもありました。何かにつけてギャップがあるのがすごくいいな、と。

──豊崎さんは本当に作品の、奥深いところまで受け止めてらっしゃるような……。

豊崎:本当にこの作品からはクリエイター魂を感じるというか、気合十分で作ってくださっていることが伝わってくるので、こうしてお話しするのもついつい熱くなりますね。そういう私も「声優」というポジションで、クリエイターとして関わらせていただいているわけですけど。ただ声優さんって、こうして取材で取り上げてもらう機会はありがたいことに多いですが、決して作品づくりの中で主人公的なポジションではないと私は思うんです。むしろ主人公になるべきは原作の先生だったり、監督さんだったり、ほかの制作陣のみなさんじゃないか、と。作品にかける労力の大きさや年月の長さは、みなさんの方が長いわけですから。あくまでも私は声の演技を任せてもらっている、ひとつのセクション、作品のパーツのひとつだという意識はずっと昔から持っているつもりなんです。主人公のように扱っていただけるのはなんだか申し訳ないな、って。もちろん、自分のやらせていただく仕事は感情を使う仕事なので、主人公じゃないからといって事務的に関わることはということは絶対にないんです。そういう本当にたくさんの方々がひとつの作品を作っている中のひとつの駒だという気持ちがあるからこそ、多くの人が丁寧に、熱く関わっている作品の大事な部分を任せてもらっていることに感動しながら、お芝居をしています。いち視聴者でもあり、同時に、作品に関わるクリエイターのひとりでありたい。声優として作品に関わらせていただくというのは、そういうことなのかなと思っているんです。

──では最後に、放送を最後まで見ていただいたファンのみなさんにひとことを。

豊崎:放送直前にあったAnimeJapan 2017のイベントで、「“Re:CREATORS”ってどんなお話ですか?」というような質問があったときに、私、「あなたの物語」と答えた覚えがあるんです。この作品を見終えたあと、まさにそうなっていたら、いつか窓から、セレジアみたいにキャラクターがガラスを割って部屋に入って来るんじゃないか? みたいに感じてもらえていたらいいな、と。最終話のあともアルタイルや颯太くん、ほかのキャラクターたち、そしてみなさんの「物語」は続いて行きますので。彼女たちと、見てくださったあなた自身の「物語」が、どんなものになるのか。これからも、そんなことを考え続けていただけたら、本当にうれしいです。


豊崎愛生
主な出演作―“けいおん!”(平沢唯)  “めだかボックス”(黒神めだか) “ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~”(合田美桜) “クズの本懐”(皆川茜) など多数

インタビュー・構成―前田久