Original Story and Character Concepts by Rei Hiroe Directed by Ei Aoki Animation Produced by Studio TROYCA Original TV Animation
interview
2017.09.09
“Re:CREATORS(レクリエイターズ)” に登場する、個性的なキャラクターたち。その登場人物たちに命を吹き込むキャストのみなさんに、本ウェブサイト限定掲載のインタビューを行いました! 小松未可子さんに続いて、連載第8回目となる今回は、水篠颯太役を演じる山下大輝さん。颯太役を演じる中で山下さんが感じたこととは?
──放送も残すところ最終話(#22)のみとなりました。アフレコは少し前に全話終えられていますが、今の率直なお気持ちはいかがですか?
山下:やっぱり寂しいですよね。22話って長いような気がしていましたけど、終わってしまうとあっという間だったなと。でも振り返ってみるといろんなことがあって、22話によく収まりきったなと感じるぐらい濃い内容の作品でした。だからこそ収録を終えた今は寂しいです。ただ、まだオンエアは続いているので、それを見ていると自分が何を残せたのか、確かめられるような気持ちがしている部分もあって。そういう意味では安心感もあるんです。現在進行形で毎週、毎話、自分たちが表現しようとしたことが視聴者のみなさんにきちんと届けられている手応えがあるんですよね。
──颯太役にはオーディションで決まられたんですか?
山下:はい。オーディションのときは、会場にすごくたくさんの方がいらっしゃっていたことを覚えています(笑)。こんなにたくさんのキャラクターが出てくるのかと、びっくりしました。事前にいただいた資料も分厚くて、キャラクター一人ひとりの世界観であったり、作中作それぞれの雰囲気がその時点ですでに細かく設定されていて、とにかく興味深いオーディションでした。で、僕は颯太のセリフを壮絶に噛んだ記憶があるんですよ(笑)。
──なんと(笑)。
山下:焦っているシーンのセリフで噛んでしまったんですけど、それでもお芝居を続けたんです。で、そのままの流れでオーディションが終わったので、「これはもう、終わったな……」と思ったんですよ(笑)。そうしたら後日、役に決まったと連絡をいただいたので驚きました(笑)。でも、今にして思えば、颯太ってそういうところのあるキャラクターだったからかもしれないな、と。何か伝えたいことがワーッと出てきたときには、たとえ噛んだとしてもそれを伝える。そういう熱量を持っているキャラクターですよね。だから、失敗したことで、逆にいい感じにキャラクターっぽさが出たのかなって、今では感じています。
──そんな颯太の第一印象をうかがえますか?
山下:出てくるキャラクターたちの中で、いちばん「普通」だなって思いました。たぶん、この子が普通なことによって、まわりの個性が際立つんだろうな、と。そして、いちばん視聴者目線に近いキャラクターだとも思いました。
──ではそこから、役作りをしていく上ではどんなことを考えたのでしょう?
山下:序盤はやっぱり周囲に翻弄されるというか、この作品の中で最大のリアクション要員だと感じていたので、誰よりも新鮮にリアクションをとることを意識していました。特に別の世界のキャラクターたちが現実に登場したときのリアクションは、ちょっと大げさなくらいの演じ方を意識しました。ただ、視聴者のひとりのような目線から始まって、だんだんと物語の渦の中に巻き込まれていく。広江(礼威)さんには序盤のアフレコのときに「このあと、ちゃんと主人公っぽいところも出てくるからね」と聞いていたこともあって、その中で「自分」というもの、自分の意志を見つけていくというのが、彼を演じる上での根幹になっていくのではということは薄々感じていました。
──後半の展開も序盤から織り込んでいたんですね。
山下:そうです。だから驚くところだけではなく、弱々しいところも過剰なくらい、見ているみなさんから「イライラするな」と思われるくらいの演じ方を心がけていました(笑)。頼りなさを徹底しようと思ったんです。そうすることで、終盤で成長した姿とのギャップが大きく出るといいな、と。そこが僕の中での、颯太を演じる上で立てた作戦でした。その分、台本を読んでいて、だんだんと自分の意志が強くなってきているのを感じるところは、そこだけは相手がたとえとてつもない力を持っている被造物であっても負けないように、自分の意志をはっきりとぶつけなきゃいけないと意識していました。でも本当に、颯太は難しい役でしたね。被造物のみなさんは意志がはっきりしているんですよ。「自分はこうしたい」というのがちゃんとある。悩みはするけど、悩む内容は結構はっきりしていて、根が暗くない。見ていても気持ちがいいですよね。一方颯太は、本心がどこにあるのかがなかなかつかめないキャラクターだったんです。確固たる「これだ!」っていう正解は、彼の中にはない。でも、正解だと思えるものをどうにかして信じようという気持ちはある。だから強い気持ちをぶつけるときも、セリフには確実に迷いはあって……。でもそんなんじゃいけない、戦わなきゃ、がんばらなきゃいけない……そんな葛藤の中の覚悟みたいな部分を演じるのが、とても大変でした。そこがまさに彼らしいところでもありますからね。
──少しずつ成長していく彼の、最初の変化が感じられた話数はどこでしたか?
山下:彼は出会いの一つひとつがターニングポイントだから、ある意味では全話そうなんです。もともとすごく狭い世界で生きてきた彼が、セレジアが現れたことで一気に世界が広がって、いろんな人と出会っていく。もちろん、メテオラに相談しようとしたところや、真鍳と関わることになった場面は大きいですよね。そうした流れがあったから、アリステリアに物申すこともできた。まみかの死ももちろん大きかったです。あんなつらい体験をして、よく彼は引きこもらなかったなって。そういう諦めないところは、素直にすごいなって思います。「もういいよ!」って投げ出してもおかしくない。諦めそうになっても支えてくれる人がいたから、でもありますけど。その点で彼は、運命力みたいなものを持っているのかなとも感じていました。まわりにすごい人たちが集まってくれる。また被造物のキャラクターたちって、自分たちの元いた作品世界を背負っているだけのことはあって、言葉の力が強いんですよ。
──松原たち一流のクリエイターとの出会いで、クリエイター魂が刺激される流れもあって。
山下:そうなんです。密かに抱えていたクリエイターになりたいという夢を、本当の、本物のクリエイターたちと会って、刺激されたのも大きいですよね。クリエイターが本気でぶつかりあうところなんて、なかなか普通の高校生が見ることはできないじゃないですか。しかも自分たちが作り出した作品のキャラクターが目の前に現れたことで、本当はキャラクターや作品に対してこんな気持ちを持っていたんだという、心の奥底にしまっていそうなことを、ぶちまけているんですよね。それを間近で目の当たりにできた颯太は、誰よりも心を動かされたんじゃないかなって思います。颯太ってきっと、もともと雑誌のインタビューとかを読んだりして、クリエイターの気持ちを想像していたとは思うんです。でも実際に会って目撃した、普段は見せないような深い部分、クリエイターや作品の核の部分は全然違った。本当にその経験は、彼にとっては一生の宝物になるだろうし、彼の未来にもつながるんじゃないかなと思いますね。
──シリーズ後半では、セツナとの関係が鍵になりました。セツナに関しては、どんなことを考えながら演じられたのでしょう?
山下:クライマックスの作戦は、颯太にとっても複雑な思いのあるものだったと思うんです。アルタイルという存在の生まれた状況を詳しく知っているのはただひとり颯太だけで、セツナがアルタイルに向けた思いを知っている彼にしか実行できない作戦だと、自分でも理解して提案した。そこには、ただアルタイルを止めるためには最善の策だという気持ちだけではなく、自分の過去にけじめをつける意識もあったと思うんです。でもそれを本当に実行していいのか。セツナが顕現するまで、やっぱり迷いがあったと思うんです。承認力の部分を真鍳がなんとかしてくれて、あとは覚悟を決めるだけだったなんて、心臓が締めつけられるような気分だったのかなって思います。……実はその、僕も演じるにあたって、何が正解かが完全にはわからなかったんです。颯太の中でも気持ちが分かれていたし、もうひとつ、そんな彼を見ている僕……山下大輝自身の視点だと、また違う思いもあったんです。
──それは?
山下:あそこで顕現したセツナは、本当にセツナなんだろうか? と考えてしまったんです。
──顕現したセツナは、亡くなった本当のセツナに近い存在なのか。あくまでも颯太にとって都合のよいキャラクターとして作り出されたセツナなんじゃないか? みたいな見方もできますよね。
山下:そのあたりを考え始めるとおかしくなりそうで。けど、きっと颯太は、そうした点もひっくるめて、彼とセツナの過去を背負っていく覚悟を持ったんだと思うんです。そう考えると、最終回での彼の姿にも繋げられますし。
──駿河もそうでしたけど、この作品での「作者」って、キャラに思い入れながらも同時に突き放しているところがある。
山下:そういう姿はすごくリアルですよね。
──颯太のセツナの扱いは、その意味でクリエイター的だったのかもしれませんね。
山下:そうですね。何かリンクする部分がありますよね。
──では最後にあらためて、最終話を楽しみにされているみなさまにひとことお願いします。
山下:第21話をご覧いただいたみなさんは、どういう結末を迎えるのか、気になっているんじゃないかと思います。第21話でも区切りがいいところまで話が展開しますからね。アルタイルも無事成仏したことですし、このあとは一体どうなるんだ? と。僕も第21話の台本を受け取ってから、最終話の台本をもらうまでのあいだは気になって仕方なかったです(笑)。こんな風になるのか!? とびっくりが散りばめられている最終回になっているんじゃないかと思いますし、最終話を見たあとにまた第1話を見たら、また何かつながりが見えるんじゃないかなと思います。いろいろと考察意欲がそそられたら、また全話、ぜひ一気に見ていただきたいです。僕も見たい。ぜひ何度も、この作品を楽しんでくださいね。
──ありがとうございました。
山下:……颯太はネタバレ要素が多いキャラなので、これまでこんなに彼のことを語れる機会はなかったんですよね。うれしいな。いろいろな気持ちが出てきちゃいました。やっと言えて、よかった。
インタビュー・構成―前田久