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Original Story and Character Concepts by Rei Hiroe Directed by Ei Aoki Animation Produced by Studio TROYCA Original TV Animation

Re:CREATORS(レクリエイターズ)

interview

2017.07.29

Re:CREATORS キャストインタビュー #06 鈴村健一

“Re:CREATORS(レクリエイターズ)” に登場する、個性的なキャラクターたち。その登場人物たちに命を吹き込むキャストのみなさんに、本ウェブサイト限定掲載のインタビューを行いました! 水瀬いのりさんに続いて、連載第6回目となる今回は、弥勒寺優夜役を演じる鈴村健一さん。“閉鎖区underground -dark night-” の主人公のライバルであり、物語のラスボスという設定の弥勒寺ですが、そんな彼を演じる中で鈴村さんが感じたこととは?


弥勒寺は、僕らの世代のヤンキーにそっくり

──オーディションの際、役についてどんな説明を受けられたのでしょう?

鈴村:これが、ほとんどないに等しくて(笑)。弥勒寺の元いた作品世界では、東京を舞台にチーマーたちが戦っていて、彼はその世界の主人公のライバルである……みたいな説明だけでした。

──では本格的に役作りを始められたのは、役に決まって、台本を手に取られてから。

鈴村:そうですね。でも実際に現場でアフレコに入る前にも、特に説明はなかったんです。すごく感覚的にオーディションを受けて、感覚的に演じ始めたけど、それが役に合っていたという感じでした。でも、これは僕以外の人も、結構そういう人が多かったんじゃないかな? 登場してからしばらくは、明確なベクトルがそれぞれのキャラクターにあったというか、「こういう世界観における、こういう立ち位置のキャラクターです」というのを、特に序盤の話数だと意識的に、記号的に演じていたように思います。ぼくの役は主人公のライバルであり、主人公側からの目線で見れば悪役と捉えられてもおかしくないような立ち位置にいる、という部分を抽出して演じた感じですね。

──そこをもう少し具体的にお訊きしてもよいでしょうか。

鈴村:初登場の話数やその次の話数では、明らかに悪いやつに見えるというか、「荒くれ者」に見えることがとても大事な部分だと感じたんです。そのあたりを強調した感じですね。颯太たちにとっての敵かな? 味方かな? と見ているほうに感じてもらうことが大事で、どこか敵らしく思わせることを意識するというか。「何かやらかしそう」「暴れそう」という部分を意識的に出していた覚えがあります。

──常にヤバそうな人物ではないけれど、一歩間違えた対応をすると、とんでもないことをしかねないような。

鈴村:はい。そういう狂気が大事だと思ったんです。のちにそうじゃなくなりますけど(笑)。すぐにカドが取れて、人間性が増してくる。出てきたときと周囲に馴染み始めてからで、彼のキャラクターは少し見え方が変わっていますよね。そこが面白い。

──颯太たちの一行に参加してみると、どんどん気のいい兄ちゃんだったことが明らかになっていきました。

鈴村:そうなんですよね。実際、彼はたぶん、元の世界でも嫌なやつ、悪いやつではないんじゃないかな。ただ目の前にあることを楽しんでいる人という感覚が強くて、演じる上では善でも悪でもない、「中庸」に近い立ち位置を意識していました。善悪のどちらにも振れる可能性があって、そういう意味では、「悪いやつだから味方になる」「いいやつだからこっちにつく」みたいな形で立場を選ぶのではないところが、このキャラクターの魅力的なところなのかなとも感じていました。

──現界してから、やってきた世界を楽しんでいる感じはありますよね。

鈴村:うん。単純に楽しそうに生きている。そのうえで、自分が今楽しむために何が必要なのかをよく考えているやつだと思います。もっと楽しむためには、とりあえずこの世界がなくならないほうがいい。アルタイルは世界をなくそうとしている。ならば、なくならないように戦おう、みたいな。そういう意味では、颯太側につくのは彼にとって必然だった感じがしますね。

──このインタビューは16話まで放送された時点で公開されるのですが、ここまでの話数で、弥勒寺絡みのシーンで印象に残っているものはどのあたりでしょう?

鈴村:やっぱり板額取られ事件ですよね。

──大事件ですよね。

鈴村:もう大事件ですよ! しかも取られた真鍳には、木刀まできかなくなって。もう現場で演じるときから悔しくて、真鍳に引き止められて、「何ィ!?」と振り返るシーンは、鈴村健一本人としては「振り返るな〜!」と思いながら演じました(笑)。

──(笑)。

鈴村:役ではなく、鈴村健一本人の思考としては超不本意で(笑)。弥勒寺として振り返らざるを得ない動機を一生懸命考えて、あそこはもう、真鍳に興味を持ったんだと。今、自分に向かって板額の話をしようとするやつがとても新鮮で、面白く感じた。しかも解決するのにそんなに時間もかからないと思ったから、目の前に面白いものが出てきたときの子供のような気持ちで、振り返ってしまった。そんな風に自分を納得させて演じました。で、その結果板額を取られちゃうという、恥ずかしい結果になるんですけど。でもそこがまた弥勒寺っぽい。

──「弥勒寺っぽい」?

鈴村:こいつ、頭のいいやつで、いろんなことを受け入れる、すごく器の大きいやつなんです。いろんなものを自分の頭のなかで整理して、自分の人生を彩るようにポジティブに変換して受け入れられる。そんな最高にいいやつのところが、真鍳相手では裏目に出たのかな、と。一本気なところを上手く逆手にとられたというのか……いやぁ、思い返しても悔しかったっすね! って、どんだけ思い入れて作品を見てるんだって話ですけど(笑)。

──真鍳役が坂本真綾さんなので、「とんでもない夫婦喧嘩」と反応されていた方もいて。

鈴村:あはは。その意味でも負けて悔しかったですけどね。「夫婦喧嘩で負けたよ〜」って(笑)。

──でもあのシーンは、最後は負けてしまいますけど、その前、颯太が真鍳に心をボロボロにやられているところに助けに来てくれたときの、頼れるアニキ感がたまらなかったです。

鈴村:たしかにめっちゃかっこよかったですよね。最高だった。だからこそ、そのあとで板額を取られるのがめっちゃかっこ悪い。それも計算された流れなんだと思うと、スタッフのみなさんはすごいなと思いますよね。

──他人を気にかけてくれるというか、温度感のあるキャラクターだなと。

鈴村:人と関わることで面白いことが起きることを、彼はよく知っている気がするんですよね。ひとりでいることもできるタイプだとは思うんですけど、それ以上に、何かと干渉しあうことの面白さを知っている。実はそこは真鍳も一緒なんですけどね。真鍳の場合は、誰かと関わることで悪いことが起きる。それが楽しめる。弥勒寺も近い発想をしているけど、義理堅い。人と人を繋ぐことで、今よりもっと面白いことが起きるのが、彼にとってはすごく大事。繋いだ縁を切ってしまうと、彼にとってプラスには働かない。義理を守ることがいろんな形で自分に楽しさを返してくれることがわかっている。だから優しくいられるという気がします。で、これって、僕の世代のヤンキーにそっくりなんですよね。

──ああ〜! なるほど。

鈴村:本当に理不尽に殴ってきたり、モノだって奪いますけど、仲良くなるとあんなにアツいやつらはいなかった(笑)。今のヤンキーは質が変わった、陰湿になったなんていわれますけど、僕らの時代はヤンキーではない僕みたいなやつとも仲が良かったですから。そういう懐かしい感じが弥勒寺にはあるかなと思います。

──ちなみに板額は彼にとってどんな存在なんですか?

鈴村:詳しい説明はされていないので、あくまで僕の想像に過ぎないんですが、“うしおととら” の蒼月潮ととらの関係に近いのではないかと。いつか自分が食われるかもしれないけど、今は一緒にいて、絆も生まれつつある……みたいな。食うか食われるかの共存関係で、今はたまたま自分がマウンティングできている。

──クラシックな不良感に、腐れ縁的なパートナー。男の子のロマンが詰まってますね。

鈴村:男のロマンが無限大ですよ、彼は。

──だからこそ、そういうノリから縁遠そうなメテオラなんかからするとボコボコにいじられるところがあって。総集編での傷口への塩の塗り込み方はすさまじかったなと。

鈴村:ひどいですよね。「ざまぁ」といわれてますからね。でも、彼女とは一生平行線でしょうね。まさに価値観の違いというはこういうこと、といった感じで。

──でもなぜか「めっちん」ですよね。他のキャラをあだ名で呼ばないのに。なんでですかね?

鈴村:たぶん、好きなんでしょうね(笑)。

──えっ(笑)。

鈴村:実は弥勒寺って、すごく理性的なキャラでもあるんですよ。彼のしゃべりって、とても理路整然としている。とんでもなく理解力も高い。だからたぶん、メテオラの発言にいちいち共感できていると思うんですよ。だから、思考回路の部分では似ている部分があって、そこのところを全面的に信頼しているんでしょうね。

──価値観は違うけど、同じ理性的なタイプとしてのシンパシーはある。

鈴村:だと思いますね。で、昔のヤンキーは信頼するとあだ名で呼びますからね(笑)。

──ああ、そこもヤンキー感! 「昔のヤンキー」ってキーワードで、いろいろ見えてきますねえ。

鈴村:ほぼ解決できると思いますよ、弥勒寺に関しては。

──鹿屋とのコンビが楽しげなのも、ヤンキー感ですよね?

鈴村:そう。あのヤンキー感を解説するとすれば、ヤンキーはデカいものが好きですからね。ギガスマキナのことがすごい好きなんですよ。実際「あれ、今度乗せてくれよ」って言ってましたし。

──あれは大型バイクと同じ扱い! で、鹿屋は鹿屋で舎弟気質で。

鈴村:そうそう。で、ヤンキーは「アニキ」って呼ばれるの好きですからね。すぐに兄弟って言いたがる。群れたがるというか。そういう意味で舎弟だと思っていると思いますよ。

──彼といろんなキャラの関係性って面白いですね。第16話では、この作品で初めてとなる、同じ世界観のライバル「白亜翔」が登場しました。

鈴村:翔はまた、岡本信彦くんの演技がぴったりなんですよ。主人公らしい芝居がビシッと決まっている。この世界観の中で、お互いのキャラがどうあってほしいのか、とてもいい場所にたどりついて演じられています。当然、先のシーンでは戦うことになるんですが、いいシーンになったと思うんですよね。楽しみにしてください。

──では最後に、今後の展開のみどころを。

鈴村:この作品にはふたつの軸があるんですよね。ひとつは、エンターテインメント作品としての軸。ここから先、すべての謎がひとつひとつ解決していって、その途中には笑いあり、涙あり、もちろんアクションもあります。まず何より、エンターテインメント作品として楽しんでいただける内容になっていると思います。で、もう一軸が、クリエイターさんたちの物語であること。この作品では「モノを作るとは何か?」ということが語られていて、それは今、現役でクリエイターをやっている人たちはもちろん、これからクリエイティブになるだろう人たちにも向けたものなんです。別にエンターテインメントの世界だけの話じゃなく、すべての仕事は、「モノを作る」ことにたどり着いているんですよね。たとえば、今、この記事をPCで見ているのか、他の手段で見ているのかわからないですけど、PCを作った人もクリエイターだと思うし、ぼくの話を原稿にまとめてくださっているライターさんもクリエイターだと思うんです。どんな職業もその先にモノが作られる以上はクリエイターであるというか、言い換えると、人生とはすなわち、何かを作ることだと思うんです。そういう意味で、この作品は誰の心にも響くような、クリエイターの物語になっていると思います。ふたつの軸、どちらの目線でも気軽に楽しめる完成度の高い作品になると思いますので、ぜひ最後まで見守って、応援してください。


鈴村健一
主な出演作―“劇場版 空の境界”(黒桐幹也)  “銀魂”(沖田総悟) “おそ松さん”(イヤミ) “宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち”(島大介)など多数

インタビュー・構成―前田久