Original Story and Character Concepts by Rei Hiroe Directed by Ei Aoki Animation Produced by Studio TROYCA Original TV Animation
interview
2017.05.13
“Re:CREATORS(レクリエイターズ)” に登場する、個性的なキャラクターたち。その登場人物たちに命を吹き込むキャストのみなさまに、本ウェブサイト限定掲載のインタビューを行いました! 連載第1回目となるキャストは、アリステリア・フェブラリィ役を演じる日笠陽子さん。アフレコ収録にあたって日笠さんが感じたこととは?
──アリステリアという役を、日笠さんはどう捉えながら演じられたのでしょう?
日笠:アリステリアは純粋でまっすぐなキャラクターですね。とにかく思い込んだら、一直線に走るのみ。自分の考えと違うことを言われたら怒っちゃうし、人の好き嫌いもわかりやすい。「貴様!」と呼ぶのが嫌いな相手で、「其処許(そこもと)」と呼ぶのは敬意を払う相手なんだなって(笑)。自分の感情をセーブしない、こういったキャラクターを演じるのは久しぶりだったんですよ。昔はこういうまっすぐなキャラを演じることがわりと多かったんですけど、最近は主人公たちを手の上で転がすような、全てを知っているようなキャラを演じる機会を多くいただいていて。アリステリアはその逆で、何も知らないままに突き進んでいくんですよね。
──そういう役を久々に演じてみて、いかがでしたか?
日笠:「こういう役を演じるのって、こんなに大変だったんだ!」という発見がありました。感情がいつも全振りというか、何事にも全力で体当たりする役なので、毎回アフレコのあとはヘトヘトになるほど疲れていて……歳をとったことを痛感させられました(笑)。また不思議なことに、歳を重ねて大人になると、役者は感情に柵(さく)を作ってしまいがちなんです。けれどもアリステリアはその柵……感情の波を止める柵を取り払わないと演じられないキャラクターで、アフレコのたびにその作業をするのがまず大変でした。早い時間帯の収録でもありますし(笑)。
──早起きでテンションを上げるのは大変ですよね(笑)。
日笠:そうなんです。収録が終わったあとには、もう一度柵を作って感情の流れを止めないと大変なことになるし。そういうことをするのも久しぶりだった分、大変ですけど、すごく楽しかったですね。そういえば以前は、アフレコ現場で感情をぶつけすぎて収録後に倒れてしまっていたりしたことを思い出したりもして。いろいろな役柄を演じる上で、心に柵を作るのも大事なんですけど、役者って本来は柵がない方がいいんだな、と。「初心忘るるべからず」じゃないですが、そういう気持ちをあらためて思い返させてくれるキャラクターでもあって、出会えてとっても幸せです。
──監督や音響監督からは、役について何かお話はありましたか?
日笠:他のキャラクターとの距離感や、感情の出し具合に関して整理していただいたことはありました。まみかと話すことでアリステリアの気持ちがほぐれて笑顔になるシーンがあるんですけど、そのシーンは最初、その笑顔の表現を声にしていたんですよ。「ふふっ」みたいな笑い声を入れたり、まみかに語りかけるときは優しい感じを出してみたり。でも、そういうことはしなくていい、と。
──それは、アリステリアがまみかに対して壁があるということでしょうか?
日笠:いえ、私はそこは、まみかとの距離感というより、自分の中にある感情の出し方がわからないと解釈しました。もといた自分の世界……“緋色のアリステリア”の世界が凄惨な、つらいところで、己しか信じられるものがなくなって、心を閉じ込めている部分がアリステリアにはあると思うんです。だから誰かに心を開いても、表にはそこまで出ることがないのかな、と。心がここ(喉元を指で示す)で留まるというか。表情に少し出るけれど、声にまではならない。
──不器用なんですね。
日笠:そうですね、とっても不器用なんだと思います。まっすぐすぎて不器用。傍から見ていると「バカっ! もっと楽になれ〜!」って思っちゃいます(笑)。演じるのが大変だったのは、そんな気持ちを感じていたからでもありました。
──見た目はお姉さん系ですけど、中身は結構子供なところもあるというか。
日笠:見た目はまみかの方が子供っぽくて、アリステリアがお姉さんですけど、中身は真逆ですよね。まみかの方が、起こる出来事に柔軟に対応していて、そういう意味ではすごくお姉さんっぽい。アリステリアは自分の見える範囲だけで判断してワーワー騒いでいる感じで、子供というか、「無垢」。成長したり、何かに気づいたりすることもまだできないくらい、無垢なんです。
──“緋色のアリステリア”の世界では、背負った役目もあって、そういう生き方しかできなかったんでしょうね。
日笠:「自分はこうだ!」と決めて突き進まないと、死んじゃうくらいの世界だったんでしょうね、きっと。“緋色のアリステリア”の世界がどんなものなのか、見てみたいです。他のキャラクターたちもですけど、スピンオフ作品を作ってほしいんです! たぶん、アリステリアは自分の世界でも友達がいなかったのかもしれないと思っていて、で、まみかはアリステリアの世界には絶対にいないタイプじゃないですか。別次元の存在すぎて、最初のうちはマスコットキャラのように捉えていたのかもしれない。でもそんなまみかと出会ったことで、アリステリアは自分の感情に気づき始めた。まみかという針が刺さって、本当に小さな穴ができて、ずっと張り詰めていた空気がほんの少し抜けた……みたいな感覚ですかね。真逆だからこそ惹かれあう、自分にないものを持っているから尊敬できる。ふたりはそんな関係な気がします。
──まみか役の村川梨衣さんのお芝居はいかがでしたか?
日笠:まみかの天然さはりえしょん(※村川さんの愛称)の天然さと重なるところがあるんです。まみかはアフレコ現場で愛されキャラになっていたんですが、役とりえしょん本人のキャラが相まってそうなっているような気もします。私、りえしょんとプライベートでもすごく仲がいいので、そういう意味でもアリステリアがまみかに心を開くのは分かる気がしました。おかげで気負わず、フラットにお芝居ができたように思います。
──そのほかに、演じていて特に苦労された点はありますか?
日笠:基本的にアリステリアは喋る言葉が難しいので、そこが苦労しました。「其処許」もそうだし、必殺技を出すときの「ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン!」も、言い慣れない単語だから大変で。その上、一度しゃべりだすとセリフが長い(笑)。難しい単語は意味を全部調べて理解するのはもちろん、イントネーションも気をつける必要があって、さらに感情も入れないといけない。いろいろと気をつける必要があったので、その点でも結構、演じるときはテンパり気味だったかもしれないです。あと叫ぶセリフが多いので、喉の負担もすごかったです。アフレコはもう全話終わっているんですけど、すべて録り終わったときには正直なところホッとしました(笑)。
──精神的にも肉体的にも大変な役だったんですね。では最後に、日笠さんの考える6話以降の展開の見どころは?
日笠:戦いって、基本的にはどちらかが勝って、どちらかが負けますよね。今後、キャラクターたちの戦いが進んでいくわけですけど、その過程ではやっぱり誰かが傷ついたりするんです。そうした戦いの意味を、アリステリアも考えていくわけですけど、視聴者のみなさんもいろいろなことを感じ取って、一緒に考えてもらえたらなと思います。それから“Re:CREATORS”はキャラクターたちのアクションシーンも目立つ作品ですが、今後は原作者たちが、人間としての戦いを繰り広げる姿も描かれるんです。そこで見えてくる原作者の人間性や生み出した作品への思いというのは、個人的にグッと来たポイントなので、ぜひ注目していただきたいです。絶対に最後まで見てください、よろしくお願いします!
インタビュー・構成―前田久